漢字“能”は、古くから「熊」に似た動物を表すことだったが、次第に「~する能力を持つ」と意味拡張され、品詞においても動詞から助動詞へと変化を遂げることで、「可能」の意味を獲得することになる。現在の文法学者は助動詞としての“能”に様々な意味項を付与しているが、内実を考察すると、いずれも「ある事柄ができるか否か」の意味であるといえる。この中核的な意味をベースに、実際の言語環境に置かれた際、内的条件や外的条件の制約を考慮しながら、話し手の認知的経験値に基づき判断を行うのが、助動詞“能”の文中の働きである。