本研究は映画産業を研究の対象とし、COVID-19 の感染拡大を踏まえた政府による規制なら びに業界団体による自主規制が事業者にどのような影響を与えたかを明らかにする。映画は自宅などでも視聴することができるため、必ずしも映画館の上映でなければ鑑賞できないわけではない。映画産業の構造上、新作は映画館でしか鑑賞することができないことが通例 であった。しかし、COVID-19 の感染拡大は映画業界にも大きな影響を与えた。多くの映画館 が一時的な閉鎖を余儀なくされ、新作を上映することはできなくなった。各映画会社は新作映 画の上映を延期するか、動画配信などで上映するかの選択を迫られた。Disney 社のように、 今度は動画配信を主体とすることとした企業も出てきた。一方で、映画館業界が映画会社との 間に動画配信の利益の一部を配分される契約を結ぶなど、新たな動きもあった。結果として、 映画業界は映画館を主体とし、補助的に動画配信を利用してきた枠組みを変えざるをえなくなったと言える。これは、単なる自然環境の変化だけではなく、政府の規制ならびに業界団体 の自主規制の影響があったと言える。