筑豊におけるサークル村の運動で、あるいは日本の先駆的なフェミニストとして知られる森崎和江の追悼特集に寄稿した論考である。森崎和江『慶州は母の呼び声』を韓国語翻訳、出版に至る経緯について記述したうえで、その意義について論じた。前半では、森崎の出生地である大邱の市民運動との関わりから韓国語翻訳、出版の企画が進んだ過程と韓国の読者から得られた反響を紹介した。後半では、森崎の作品をインターセクショナリティという視角から読み解くことによって、『慶州は母の呼び声』という作品の可能性と限界を示した。そして、植民地朝鮮で生まれ育った森崎のテキストの共有が日韓の次世代に与えうる影響について展望を描いた。