本稿は、韓国のコミュニティにおける地縁的ユニットと社会的ユニットのズレを指摘する文化人類学研究をふまえ物理的存在の共有と利用に注目し、さらにコモンズ論を参照しつつ北城路の技術者たちの語りを分析した。北城路は資材、部品、工具、機械といった町工場で必要とされるモノが手に入れやすいのに加え、複数の町工場にまたがる生産工程、言い換えるならば技術者たちの協働が可能であるため、あらゆる注文に対応できる。同時に、技術者たちは日常的な交流や親睦を通じて技術に関する情報交換や相互扶助をおこなっている。そして、このような過程を通じてそれぞれの技術者が体得した技術は、北城路という物理的制限の多い空間の維持を可能にしている。