本稿では、先住民を取り上げることの多いフィリピンの映画のなかから、日本でも公開された「七夕の妻」を題材に、映像メディアと異文化表象の問題を検討し、マスメディア研究における文化人類学の役割を再考した。そして、そこには先住民の女性にたいするオリエンタリズムのまなざしが見られたが、そうしたステレオタイプを修正するためには、人類学者が異文化表象の難しさを再確認し、質の高い情報を発信し続けることが必要であることを指摘し、加えて「帝国主義的な文化的支配から脱するための「救い」としての「たくましい心性」を持った多様な先住民たちの「生きられた文化」に対する学問的かつ実践的な眼差しの可能性をも示した。