世界有数の移民送出国であるフィリピンでは、移民労働者たちが「家族のために犠牲になって働く無力で受け見の存在」としてステレオタイプ的に表象されることが多かった。しかし、彼らの国際移動の目的も、その社会的背景も実際には大きく異なっており、それが明らかにされることはほとんどなかった。そこで本稿では、フィリピンでもっとも社会的、文化的、経済的に周縁化される先住民の国際移動に注目し、中央から物理的にも社会的にも遠く離れた先住民の住むローカルで、いったいどのように国際移動労働が展開されているのかを検証し、彼らが、自らの意思で自分たちの人生を切り開く主体であり、一つの生業戦略として国際移民労働を利用していることを明らかにし、国際移動労働の多様性を示した。