戦前、海外へ移民として渡った日本人は敗戦後も移住先に残り「外国人」となったか、引き揚げ帰国することによって「本来の日本人」に戻ったため、日本は彼らのような日系人を歴史の片隅に追いやり、その多くが日本社会の「本来」の姿とは無関係の存在とされてきた。このような状況において本稿では、これまで断片的にしか語られてこなかったフィリピンへの最初の集団移民である「ベンゲット移民」から始まるルソン島北部の日系人たちが、日本の大衆メディアによっていかに描かれてきたか、これに対し日系人たちがフィリピンや日本で自らの歴史をいかに語り、自らをどのように表象してきたかを分析することで、こうした「日系人の物語」を多角的にとらえることによってその表象のあり方を考える。A5版。