日本人は戦前から世界のさまざまな地域に渡り、そこで「日本人コミュニティ」を作って暮らしているが、一般にその子孫の二世、三世、四世などを含め、彼らは日系人と呼ばれることが多い。しかし実際には、「日系人」という用語はそれが使用される場面に応じて異なったり、当事者がこの言葉に異なる意味を込めたり場面に応じて異なる用語が用いられていて、法的ないしは社会的定義と自己定義とでは齟齬が生じるようになっている。そこで、彼らが自分たちを表現する際に用いる言葉の社会的背景と、「日系人」という用語のもつ意味や使用の妥当性を検証することで、「日系人」という用語がなぜこのような使い方をされるのかを整理し、日系人とはいったい誰なのかを明らかにする。