日系人とアジア・太平洋戦争

『南島史学』

第86号

19世紀初めに出稼ぎ労働者としてフィリピンへ渡った日系移民は、その多くが契約終了後もフィリピンに留まり、やがてフィリピン各地に日系人コミュニティが形成され、大いに栄えた。その後、アジア太平洋戦争が勃発し、こうした日系人と本土の日本人、フィリピンの人々の間にはさまざまな摩擦が生まれたが、それが公に語られることは少なかった。いっぽう元日本兵の戦記や体験記、あるいは当時のフィリピンにかんする日本側の記録などに登場する日系人と、実際の日系人たちの「戦争」にたいする認識とは大きな乖離があり、本稿ではそうした乖離を明らかにすることで、語られることのなかったフィリピンの戦前・戦後の歴史を再構築する。