滑稽譚として人間の実態を語ることに焦点を当てた梵舜本は「落ち」に持っていく中で人間味溢れる道化師が登場する。無住が描いた『沙石集』の米沢本とは異なる編纂意図が梵舜本には見える。梵舜本の改編における指針として、実録性を帯びた本文を志向しながら「場」を再現し、人間のありのままの姿を笑いによって映しだす意図が認められる。これは近世期の笑話集に近い笑いの手法であり、そこに梵舜本という伝本の異質性が浮かび上がる。梵舜本をどう位置づけるかによって新出伝本の大永三年本や永禄六年本の見方も定まってくる。安井重雄、鈴木徳男、岩井宏子、小田剛、溝端悠朗、近藤美奈子、山本廣子、内田美由紀、浜畑圭吾、加美甲多、周防朋子、中本茜、野田直恵、齋藤勝、田村正彦、吉田唯、万波寿子。