災いとその闘いについて文学を通して考察した。実際に日本中世においても現代以上に頻繁に災いは起きており、災いは日常茶飯事であった。常に災いとの闘いを記録してきた文学という学問に目を向け、顧みることは現代の不確かな情報に頼るよりも、よほど確かで必要な行為である。そこでは祈ること、忘れないこと、信じること、生き抜くこと、非日常に備えて日常を大切にすること、世の中に変わらないものはないという感覚を受け入れること、といった経験に基づいた人間の究極的な生き方が描かれており、文学が可能性に満ちた存在であることを証明している。