日本におけるオペラ制作は長い間二期会や藤原歌劇団をはじめとするオペラ団体が制作主体を担ってきた。1990年後半には新国立劇場やびわ湖ホールなど本格的なオペラ制作が可能な設備を有する公立劇場が開場し、その後文化庁が「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」を開始した2010年前後より複数の公立劇場がオペラを共同制作する事例が増加している。本稿では近年の日本のオペラ制作形態における多様化について論じた後、筆者自身が創作プロセスに関わっていた東京芸術劇場シアターオペラシリーズを事例として参照しながら、日本の公立劇場におけるオペラ制作の課題について検討した。