『特集 美術が拓く』に寄せた論文である。自分の来し方を振り返りつつ、一「美術との出会い」:等伯の松林図屏風に心打たれたこと など、二「美術の練習」:デッサンの修練など、三「日本画画材との出会いと壁」:画材への戸惑いやいきものの写生におけるモティーフとの交歓の思い出、四「生物の構造を求めて」:美術解剖学の話や論文作成、五「感性を解放する美術」:臨床美術と制作の変化、を記述した。そして、本稿の構造を示す樹木型の図(<子供の頃のお絵かきあそび>から<美術が拓く>に至る図)を作成して提示した。「感性の解放」や「絵画(美術)と文芸(ことば)の交歓」をヒントに「美術」が現代人の幸福な心のありように広く貢献できるのではないか、というのが結論である。