フランス現代詩と世界――ジャック・レダの『パリの廃墟』を読む
学習院大学人文科学研究所『O-M 2010-2011』
1960-1970年代は世界を描くことの不可能性とエクリチュールそのものを前景化する前衛の時代であった。そういった時代の趨勢のなか、現代詩人ジャック・レダは作品のなかで日常的なパリや、その中での些細な出来事を詩の主題としている。本論考では、レダがどのように世界を描いたのかを散文作品『パリの廃墟』から読み解いた。彼が提示するのは、語り手である「私」の心象風景ではなく、語り手である「私」も登場するつかの間の出来事であることを示し、彼の詩学が伝統的な抒情詩から逸脱していることを示した。