マンガと舞台演劇の構造の異なりに着目し、アダプテーション論の視点から比較分析をおこなった。マンガ作品を原作とする演劇作品は数多く発表されているが、原作をいかに忠実に再現するかという議論に留まり、メディアの異なりを議論の中心とする学術研究はほとんどなされていない。そこで本論文では原作至上主義ではない視点から、「トーマの心臓」という作品における主要な特徴である「内面」をそれぞれのメディアで描く方法について比較した。分析の結果、マンガは平面だからこそコマ割の工夫等による奥行きのある表現ができ、演劇は舞台上で視点を変えることができないゆえに平面的な表現となることを明らかにした。