やなせメルヘンの輝き――『十二の真珠』が照らしだすもの
『ユリイカ』
青土社
第45巻第10号
マンガや劇など多方面で活躍するやなせたかしの、昭和45年に出版されたおとな向け短篇メルヘン集『ふしぎな絵本 十二の真珠』(山梨シルクセンター)について、児童文学におけるメルヘン観ややなせ自身の哲学から読み解いた論考。ヨハネス・W・シュナイダーによれば、「実際に現実の生活をおくるうえで、導きとなる内容をもつ」ことがメルヘンの基本形式である。やなせが紡ぐメルヘンは、文体やイラストの平易さだけでなく、読者が現実世界で感じる痛みを描いており、まさに「導きとなる」物語である。